登園拒否 その9

父親が緑山幼稚園に連絡してみると、とにかく一度幼稚園まで見学に来てください、ということであった。

私は幼稚園側の意外な回答に驚いたが、普通の園とは違うので、それなりのそれっぽい格好で訪問しなければ、暗黙のルールめいたものがあるのだろうと、ネットで一通り調べる。

聞きかじり程度の知識で都心にあるデパートへ急いで行き、キューリくん用のものをファミリアで一式そろえる。

母親用にお受験用コーナーが設けられていたので、そこで店員さんと相談しながら、私も一式を買い揃えた。

こうしてキューリくんにお受験服を着させ、私も着慣れないスーツで身を包み、主人は仕事用のスーツで。とてもぎこちない親子はいざ幼稚園へ向かうこととなる。

外から見た幼稚園は高い壁で覆われているので、中をうかがい知ることはできなかった。

けれど来客として門の中に入ることが許され、親子3人で門をくぐった時、そこには子どもにはとても魅力的な世界が拡がっていた。

まず大きなジャングルジムがとても目を引いた。キューリくんもやはりジムに魅せられたようで、「お母さん、遊んでいい?」とそわそわと聞いてくる。

門の中に入りしばらく園庭で待っていると、副園長先生だという男の先生が出てきて、幼稚園の中を案内してくださるという。

私たち両親が「よろしくお願いいたします」と言い終わる前に、キューリくんが副園長先生の手をいきなり勝手に握った。

まるで、先生と手を繋ぐのが当然であるかのような、自然な振る舞いであった。

「じゃあ、行きましょうか」

先生はキューリくんの手を振りほどくわけでもなく、繋いだまま案内をしてくださる。

私は背筋の凍る思いであったし、主人もまた似たような感情を持っていたのではと推測する。

試験すら受けさせてもらえないだろうと、ため息と恥ずかしさの混ざった気持ちを私はぶら下げながら、先生とキューリくんの後をついて回る。

生きた心地がしない、とはこういう場面で使うのかもしれない。

キューリくんは大人しくはしているものの、先生の手を離そうとせず、結局幼稚園案内の間中手を繋いでいた。

帰り際、副園長先生がおっしゃった。

「試験日はいつにいたしましょうか?なるべくご両親の希望に沿うように、こちらも努力いたします」

キューリくんが無礼をはたらいたというのに、試験を受けさせてくれるのか?私は耳を疑った。

こんなに素敵な、窓際のトットちゃんに出てくるような先生がいる幼稚園なら、ぜひキューリくんを入園させてあげたい、そう強く願ったのだった。

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