2010年春、もう桜の季節は終わり、新緑の香りがする頃だというのに、キューリくんの生まれた日はチラチラと雪が降っていた。
キューリくんが生まれた時、暗いお腹の中から明るい外の世界へ出されたことにびっくりしたのだろう。
キョロキョロと大きな瞳で周りを見渡してから「オギャー」と小さく泣いていた。
すると私の胸にキューリくんを抱かせてもらうことなく、保育器へとすぐさま運ばれる。
それは私がキューリくんを31週という短い妊娠期間で産んでしまったからだ。切迫早産だった。
妊娠、出産に関して問題が起こるかもしれないということは、医師から告げられていた。私がSLEという難病であるからだ。
でも私には根拠のない自信があった。「私の赤ちゃんは必ず元気な子どもに育つ」何も心配していなかった。
生まれてきたキューリくんは、確かに普通の子よりは小さかった。それでも保育器の中で活発に動き、はじめは数ミリでしかない私の母乳を飲んで、そして生きようとした。
今では「保育器ベビーなんですよ」と誰かに伝えたとしても「冗談でしょ?」と笑われてしまうくらい、声は大きくよく走り、勉強は嫌いで体育が得意、友だちとよくケンカをし、友だちが泣いていたら手を差しのべることのできる、そんな男の子に成長した。
これからはじまるお話は、キューリくんと私の『ここまでの道のり』と『今歩む道』を中心に伝えていけたらな、と思います。
育児が難しいと感じているご両親、これからパパとママになるご夫婦、その他沢山の方々に『ある超低体重児として生まれてきた男の子の日常』を通して、子どもの輝きや子どもの奇跡、親の失敗や親の反省を見つめていただけたら幸いです。