昨日は私の通院があり、キューリくんを同行させる。
学童に行かせてもよかったのだけれど、いつも学童ばかりではせっかくのお休み可哀そうかな、という考えであり、また電車好きのキューリくんなので新宿にある病院まで誘ってみる。
「キューリくん、今日お母さん病院なんだけど、一緒に来る?」
「カレーの食べられる病院?」
「そうだよ」
「やったー!」
私は病院に行くのにやったーなんて喜んでいる人を見たことがないので、ふいた。
キューリくんは心がウキウキそわそわしていたんでしょうか。そういう自分の心を持て余していたのでしょうか。
「お母さん、キックスクーターやってきてもいい?」
と出掛ける直前に突然言い出す。
「え?もう出掛けるよ」
化粧をしながら私はびっくりして答える。
「外に出ないからさ。家の門の中でやっているからいい?」
「それならいいか」
正直猫の額どころの騒ぎじゃないほどに狭い家のガレージでスクーターをしたって、何も楽しくないと思うのだけれど。
キューリくんはお誕生日プレゼントが待ちきれなくて、ごねて主人に買ってもらったスクーターを玄関からかっさらうと、颯爽とドアを開けて外へ出ていった。
そのおかげもあって、私の方は手早く身支度ができた。
キューリくんを呼びに外へ行く。
「キューリくん、そろそろでかけるよ」
「はーい」
と素直にボードを片付け、いざ出発という時点で、キューリくんが自分で用意したリュックサックを何となく持ち上げてみた。
おっ重い。こんなもの大人が背負っても大変じゃないか。
「キューリくん、こんなに重いもの持って行けるわけないでしょ。中身を減らして」
「はーい」
さきほどのトーンとは違う悲しい返事でキューリくんは答える。
すると出てくる出てくる。車のおもちゃと、何故そんなに色鉛筆が必要なのかというくらい、おそらく家の中に存在する全ての色鉛筆が、リュックの中に無造作に入っていた。
まずは車を取り出させる。これは容易だった。何故って病院には車を転がして遊ぶところがないんだから。
次に色鉛筆の交渉だ。
「!!こんなに色鉛筆いるの?」
「ほしい色がなかったら困るから」
「キューリくんねえ、お母さん遊びに行くわけじゃないんだし、それに病院の待合室はテーブルがないから、お家で描くみたいに自由に描けないと思うんだよね」
「じゃ、これにする」
大して選定したという風でなく、こだわりなく適当に決めた12色入りの鉛筆の箱とノート以外は、リュックの中からバサバサと取り出し急に何とも潔いスタイルに変る。
「じゃ、行こっか!」
船頭となり、出発を私に促してくる。
「お母さん、日傘忘れないでね!」
色鉛筆の入ったリュックをカタカタ鳴らしながら、キューリくんは病院へ遊びに行く。