キューリくんはシャワーはあまり好きではないのだけれど、お風呂の湯船につかるのは大好きである。
なのに夜遅くまで起きているので、湯船に入るという時間は取れずにいつも夜はだいたいシャワーだけになる。
「オレだって風呂入りてーんだよ」
口が悪くなる。これは願いが受け入れられずマックスで怒り出した時によくあることだ。
「それだったら朝にお風呂入ればいいんじゃない?朝風呂気持ちいいよ」
『朝風呂』という聞き慣れない大人っぽい言葉の響きが気に入ったのだろうか。
「じゃあ、朝風呂するよ!するする!お母さん4時半に起こしてね」
4時半か。まあ私は起きる時間だけれど、はたして本当にキューリくんにそれが可能なのだろうか。
私のアラームが4時半に鳴る。
キューリくんは寝ているよなあ、と横にいるキューリくんを見ると、大きな目を見開いて「おはよう」とロボットのように言った。
「キューリくん、お風呂はまだ洗っていないから、もう少し寝ていて大丈夫だよ」
「じゃあ。もう少し寝るね」
数秒で寝息をたて落ちて行く。
5時15分、お風呂が沸く。
「キューリくん、お風呂沸いたけど入る?」
「…入んない」
え?入らないの?!入るのかとてっきり思ってお母さん、そういう動き方しちゃったじゃないの。
「6時半まで寝てる」
結局いつも通りじゃないですか。
ところが眠りが途切れ途切れになったからか、今朝のキューリくんは半分寝ているんでしょう、無口だ。
仕方なしに眠気を取るためということもあり、お風呂に入る時間はなくなってしまったけれど、朝シャワーしにいく。
でもなかなか浴室から出てこないのだ。シャワー時間がやけに長い。
そんなことならばお風呂に入ればいいんじゃないの?
いやーそれにしてもおかしいな。シャワー時間が長すぎる。
心配になってお風呂を覗きに行く。
すると小さなキューリくんが湯船の中でちょぼんと体育座りをしていて、お父さんがジャージャーシャワーをしているところだった。
何だと安心し、私は仕事へ戻る。でも気になって舞い戻り再び浴室のドアを開けると、もう頭と体を拭いてすましているキューリくんがいた。
「もう上がるの?」
「うん、だって7時過ぎのバスで行くからね」
すごいね、短時間で詰め込んでくるね。
こうしてキューリくんはすっかり目覚め、鼻歌なんか歌いながら髪を乾かしてもらい、朝ごはんもしっかり食べ元気に登校して行ったとさ。
それにしてもよく4時半に起きたな。