白いクリームを強く勧められる

「お母さん、クリーム塗ってみたらいいんじゃない?」

最近のキューリくんの口癖になりつつある。

クリームというのは、顔にできたシミやソバカスを薄くするというクリームらしく、どうやらテレビ通販番組か何かで見たらしい。

ちなみに自宅にはテレビを置いていないので、おそらく病院の待合室や薬局で見たのであろう。

つまり非日常の空間で見せつけられたシミクリームの宣伝は、キューリくんにとって、とてつもなくインパクトがあったのだと思われる。

そして勿論私自身も気にしていることだけれど、キューリくんもとても気になっているらしい、私の顔のシミ。

それをどうしても取り去りたいのだろう。毎日のように繰り返し説いてくるようになった。

「お母さん、本当なんだってば。おねえさんが実験でつけたら、シミがぽろっと取れたんだよ」

決して直接的ではなく、間接的なものの言い方で私に説明するキューリくん。

「お母さんはシミやソバカスあるの?」

白々しい。あるに決まっているじゃないか。

「そうかあ。お母さんは色が白いからね。シミやソバカスになりやすいんだよね」

どこで得てきた知識なのか。どうせ例のシミクリームの宣伝で得たものなのだろうが。

私もだ、レーザー以外なら色々なことを勿論試している。でもどれもダメなことを知っているので、今更キューリくんが見て感動したという『シミポロリ』的な商品に飛びつこうとはしない。

はっきり断っておかなくては今後毎日勧誘されそうだ。

「お母さんはね、そのクリームいらないの。お肌が弱くて痒くなっちゃうから」

「…そうなの」

みるみるうちに顔色が曇るキューリくん。

私の顔のシミ、よっぽど取ってもらいたいのだろう。

でも冗談ではなく肌がとても弱いので、どんな化粧品でも使えるというわけではないし、紫外線過敏症なので、レーザーでシミを退治する、というわけにもいかず、こうして放置しているのだ。

そのことをキューリくんに分かってもらうのは、まだ早いかな、と思いながら、伝えられる範囲では伝えたつもりである。

「お店屋さんまだかなー」

重い空気を変えようと、キューリくんは元気な声を出した。

私とキューリくんは近くのスーパーへお買い物に向かっていた。

それにしても昨日は暑くて太陽がギラギラと照り付けていた。

太陽よ、もうこれ以上私のシミを増やしたり大きくしたりしないで。

また小さなシミクリーム宣伝部員に目を付けられますから。

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