キューリくんが春休みに入る前から、学校から持ち帰ってきたもので徐々に浸食されていったのだが、居間が猛烈に汚かった。
満潮時に浜辺へと運ばれた海藻やら海のガラクタのように、干潮時である居間は本当に見た目が汚くなってしまっていた。
私は彼の自主性を信じ、あえて知らないふりをしていたのだけれど。
ところが1年生のキューリくん、やはり大人の指示がなければ山のように打ち寄せられている学校の道具や自分の作品や答案用紙やのりや鉛筆などなどなど、どうしていいのか分からなかったようだ。
主人がとうとうこの状況に切れだした。
「キューリくん、いい加減に片付けないと、掃除機が掛けられないよ!」
「どうして掃除機を掛ける必要があるの?僕はお母さんとかくれんぼうがしたいんだけどな」
「いつまでたっても汚いままだと、お父さん嫌になっちゃうよ」
そこから怒涛の如く、シャカリキになってゴミの山(失礼)に取り掛かった。
主人と私が。
キューリくんはといえば我関せずという態度で隣の部屋から見ているだけで、全く働こうとしない。
「ねえねえ、そろそろ休憩しようよ!」
働いてもいないのに、休憩だけはきっちり取ろうとする。
「キューリくんね、休憩っていうのは、働いた人が取るものなんだよ。キューリくん働いたの?」
「ふーん、そっか」
なんだかんだと親子3人で休憩を取ると、その後私たち大人は主に仕分けに精を出す。
「お父さーん。僕働いているよ!」
見るとキューリくんがホコリを取るフワフワした道具を手に持ち、ウロウロとホコリの取れそうな場所を探している。
目に見えたホコリだけをなぞり、満足なのだろう。
「お父さん、僕お仕事しているよ」
と本人としては一所懸命のようだ。
主人は優しさからなのだろう、キューリくんをバカにするという姿勢は一切感じられず、大真面目に答えていた。
「キューリくん、とっても助かるよ」
おそらく『とっても』部分に気をよくしたのかキューリくんは、色々なところのホコリ取りに家中駆け回りはじめた。
まあ、そういうこと(ホコリ取り)も必要なのだけれど、もっと必要なことがあるんだけどなあ、と私は心では思いながら、結局大人だけで殆ど片付けてしまう。
2年生になればもう少しお片付けの重要性が理解できるようになり、学校のお道具箱をはじめ、自分の部屋や皆が使う居間をキレイに使うことができるようになればいいな、と淡い期待を寄せる。
けれど、キューリくんより上の学年にお子さんがいらっしゃるお母さまの話では『1年生男子と2年生男子では大差がない』、つまり1年生も2年生も男子のレベルに違いは見えない、ということだった。
そして汝もか、キューリくん。