本嫌い卒業男子

最近キューリくんの読書欲が強い。

強いといっても例えば、以前であれば図鑑の写真をじっと眺めているだけだったけれど、最近は説明文の部分も読んでいるらしい、という程度のことだけれど。

児童用の小説などは、おそらく一冊丸々読破することは難しいようではあるけれど、パラパラ読みであれば可能であるようだ。

はるか昔を思い返せばだ。私は幼稚園の時にはひらがなもカタカナも読めなく、読書というと、絵本を開いてただ絵を眺めているだけであり、それにしても飽きずに1ページを30分も眺めているような子どもであった。

キューリくんの場合は字は読めるので私とは少し事情が違うけれど、まあそれに似た感覚はあるのだろうと思われる。

なのでなんとなくキューリくんを理解できるような気持ちではあったので、一時的には児童書を強制的に読ませたりもしたけれど、『私だってそうだった』と思い出し、以後あまりヤキモキせずに自由にさせておいたのだった。

そうしてキューリくんは、小学校1年生になっても字を読もうとせず、絵を眺めることで満足しているようであった。

しかしごくごく最近、おそらく絵を見ているだけでは退屈になったのか、絵だけでは情報が得られないと観念したのか、いよいよ字を拾い読みする、というスタイルになりつつあるのだ。

証拠に「お母さん、この言葉何て意味?」と難しめの単語を指さしながら、本を持って質問してくることが急に多くなった。

正直辞書で調べなさいよ、とも思うのだが、そこまでを要求するのはまだ早いかな?と私もついつい勘弁してしまい、生き字引とはなり得ないけれど、それに近づくように努力している(主にネットで調べて伝えるわけだが)。

とにかく字を読みたいという欲求が生まれ、それが育ちつつある今、キューリくんのその心を大切にしなければ、と彼の本棚は厳選された本で埋まっている。

読書欲を削がないように、かなり大き目の字で書かれた児童書を中心に、あとはキューリくんの大好きな図鑑類などで固めている。

ところが今キューリくんは私に甘えたい時期であるようで「これ読んで!」とリクエストしてくることもまだ確かにある。

そういう時、勿論断ったりせず読んであげるのだけれど、ある意味才能なのだろうか。耳で覚えてしまうのだろうか。ストーリーを完全にコピーしてしまうようなのだ。

ある日読むのが面倒臭いなと思った私は「キューリくんが読んでくれない?」と逆にリクエストしたことがある。

たどたどしい日本語を想像していた。

ところがキューリくん、すらすらと淀みなく、お話を完結させたのである。

これにはたまげた。だってあんなに字を読むのを嫌がっていたキューリくんがだ、こんなにも流暢な語り口で人に読み聞かせができるのだから。

その理由はどこにあるのだろう、と考えた時、おそらく知識としてひらがな、カタカナ、漢字を知っているということが手助けし、私が何度か読み聞かせるだけで、だいたいのストーリーが頭の中に収められているのではないか、ということだ。

音楽を聴くようにストーリーも聞いただけで覚えてしまい、こんな風にすらすらと話を展開できたのではないか、と思っている。

暗記力に優れていることが良いことだとは思わないけれど、1つキューリくんの個性が発見できたようで、親としての理解が深まりうれしい瞬間であった。

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