自分のおしりを軸にして「ブーンブーン!」とエンジンをふかしながらフローリングの上を回るキューリくん。
もちろん本物の二輪車にまたがっているわけではなく、レゴブロックで作った小さなバイクだ。
それを手に持ち、おしりで回転することによって軌道を作り出している、たったそれだけの遊び。
猫が自分の尻尾を追い回して興奮している、まさにあの状態。
本当に何が楽しいのだろうか、私には分からない。
段々とおしりだけで回ることが楽しくなったのか、レゴは無視のブレイクダンスまがいをかましている。
母親として彼のヒートアップし過ぎたノリが心配だし、それに怪我をされては困るので一応声掛けをしてみる。一応。
「大丈夫?」
キューリくん、へらへら笑いながら
「だいじょーぶ!」
とご機嫌。思った通り違法な植物でも食べてしまったのかというほどに、ハイテンション。
すると突然回転を止め、猫のように四つんばいで私に近付き、睨み付けてくる。
何なんだよ、こういうの正直面倒臭いんだけどな。
私に顔を近付けていたキューリくんは飽きたのかプイっと立ち上がり、部屋の中を巡回しだす。
思い出したようにレゴの細かいブロックを集め出して、新しい何かを生み出そうと横顔で考えていた。
これはほんの10分くらいの出来事であり、こんなことの連続で彼の日常はだいたいできている。そして私は巻き込まれている。
他にもっと良い育て方があるのかもしれない。その手の情報を耳にしたことがないわけではない。
でも、私にはできない。それは私は病気であり、健康なお母さんのような考え方や動きができないからだ。
だからこんな風に考える。
キューリくんと真面目に向き合うと自分が潰されてしまうので、適度に厳しくする(これがまた難しいのだけれど)ことはあるけれど、基本自由、放っておこう、という育児態度だ。
適当といっても私はキューリくんのことは見つめている。
布団の中から観察している。
なかなか普通のお母さんみたいに抱っこしたり一緒に遊んだりすることが難しい。
でも私は、どんなお母さんよりも息子を見つめている自信だけはある。
布団の中からだけれど。