登校拒否未遂

昨日の朝、何となく心の調子が悪いのか、のんびりとした緩慢な動作で朝を過ごすキューリくん。

時計を見ているのか?という位にスローペースで物事を進めていく。

そうでしょうそうでしょう、行きたくないのは分かる。

だって昨日は大嫌いな国語、算数、理科があるんだもの。

そりゃあ登校拒否の心に拍車がかかるってものだろう。

けれど決して教科のせいにはしない。

「レイくんが意地悪してくるから学校へは行きたくない」と言い訳をする。

レイくんとは幼稚園から一緒のお友だちであり、幼稚園時代からキューリくんに限らず、色んなお友だちにちょっかい(意地悪)を出しては、反応を楽しむという悪趣味な子だ。

けれどレイくんの嫌がらせというのは何も今日に始まったことではなくて、小学校入学以前からあるものなので、いなし方を当然心得ているはずなのだ。

今更「レイくんが…」という理由も可笑しい。

結局のところあくまで推測だけれど、レイくんのことも多少登校拒否の理由として挙げられるのだろうけれど、国語、算数、理科、特に国語の授業が嫌いなので行きたくない、という風に親としては捉えた。

「別に学校に行かなくてもいいよ。でもその代わり、家でも勉強するからね」

先手必勝とでも言うべきか、キューリくんの自由な動きを封じ込める作戦に出た。

「いいよ、それでも」

小さな声ではあったけれど、はっきりとした意思表示に聞こえた。

ところがこの先、主人が追い上げを掛ける。

「キューリくん、そこに制服置いておいたから着替えてね」

「今日は雨だから長靴で行く?」

「バスで行く?お父さんの車に乗る?」

まるでキューリくんの言ったことが聞こえなかったかのように、ポンポンポンと沢山言葉を投げかける。

これは主人なりの作戦なのだ、と私は思った。

キューリくん、まるで主人の言葉に催眠術効果があるように大人しく支度をし、そうして遅刻するかしないかギリギリの時間ではあったけれど、主人と2人して家を出て行った。

放課後、気になったので学校へ電話を掛けてみる。すると先生から意外なことを言われた。

「授業態度が各教科非常に良いです。何か家の方で特別なことをやらせていますか?」

思い当たることといえば、以前は全くやらなかった読み聞かせと、キューリくんから言葉を聞き取って親がパソコンで打つという手法でブログを綴っているということであったが、ブログの方は伝えると面倒臭そうなので、止めておいた。

習い事からの帰り道、キューリくんが傘を差しながら言う。

「ぼく、雨が好きなんだ」

「何で?」

「特に梅雨に降る雨は好き」

「どうして?」

「梅雨には雨が似合うし、夏には太陽が似合うからだよ」

詩人キューリくん。

読み聞かせの賜物だろうか。それとも彼の中で寝かされていたものだろうか。

母は思う。梅雨明けまでに登校拒否が晴れればいいな、と。

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