池袋へ行く

私は池袋という街に降り立つと必ずといっていいほど東西南北の感覚がなくなり、迷子になってしまう。

昨日もやはりそうだった。

サンシャインの水族館へ行く前に、西武デパートの上にあるレストラン街でランチをしよう、という計画の元、早速改札を出て西武デパートを探す。

がデパートがない。

改札付近の黒く速い人の流れ。

私は目を凝らしデパートを探したけれどない。

「お母さんお母さん!」

と呼ぶ声が背後からする。

見るとキューリくん、定期券を上手く取り出せないようでまだ改札内で泣きべそをかいていた。

波乱の始まりを予感させる出だしである。

ようやくキューリくんは改札を出ることができ、西武も見つけることができてレストラン街へと直行する。

レストラン街は11時からだというのに、オープン前にも関わらず店の前ですでに長蛇の列を作っているところもある。

色々とお店を見た結果、キューリくんは鮨が食べたいということで鮨屋へ。

ランチ価格の安いものをいただくのならば、そんなに痛手ではないだろう、と考えたのでオーケイを出した。

ところがキューリくん、カウンターに座って食べたいのだという。

「困った」という文字が頭に浮かんだけれど、何とかなるかと思いなおし、カウンター席へ。

そこで2時間ほど鮨を楽しむ。

マグロの赤身と鯛しか知らないキューリくんは、色々なものを握っていただいた。

かれいや鯵、イカやアナゴなど、普段敬遠していたものも自らチャレンジしてみる。

気に入ったネタは何度も握っていただく。

ほおばるたびに「おいしい!」を連発し、水族館へ行く前の実地訓練となったのかもしれない。

水族館へ行くとキューリくん、自分が食べたネタが水槽内で泳いでいるのを見ると、他のどの魚よりも目を奪われ、そしてなかなか水槽を離れようとしない。

水族館内月曜日だというのにかなりの込み具合だったために、他の人に順番を代わるように促さなければ、いつまでもネタを目で追い続けるキューリくんであった。

私が具合悪くなったりキューリくんが炭酸飲料をブチまけてお着換えをしたりというハプニングがあったものの、ペンギンの水槽を最後に見てなんとか無事水族館見学は終了。

こういう時帰りの電車、キューリくんは寝てしまうこともあるのだが昨日はきちんと覚醒しており、最寄り駅まで同じテンションを保っていた。

それにしても水族館。

カップルがやたら多かったけれど、水族館へ連れてきたからって女が全てを許すと勘違いしている鼻息の荒い男を沢山見かけた。

彼女との温度差があるというか。

彼はきっと魚を逃すことだろう。

と、魚には興味がない私は人間を目で追って楽しんでいた。

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